小説『砂漠』(伊坂幸太郎)を読みました
こんにちは,『rinkuru/リンクル』です。
今回読んだのは,日本を代表するミステリー小説家『伊坂幸太郎』さんの小説『砂漠』。
とはいっても,『砂漠』は大学生の青春群像劇のようなお話ですが…面白い作品であることは間違いありません。
この一冊で世界が変わる,かもしれない。
小説『砂漠』
というキャッチコピーのとおり,思わず胸が熱くなるようなセリフにあふれており,伊坂幸太郎ファンの中でも「この小説が一番好き。」という読者は多いようです。
そんな小説『砂漠』(伊坂幸太郎)をご紹介いたします。
2006年の本屋大賞にノミネートされた作品です。
『砂漠』(伊坂幸太郎)について
509ページと中々の長編小説ですが,セリフが多めなこともあり,さくさく読めちゃいます。
作品(砂漠/伊坂幸太郎)の概要
作品名 | 砂漠 |
著者 | 伊坂幸太郎 |
初版 | 2005年 |
出版社 | 実業之日本社文庫 |
2005年の作品ですが,2022年7月に読んでも今の大学生っぽさ全開の小説です。
大学生は昔も今も変わらないのかな?・
著者『伊坂幸太郎』について
名前(なまえ) | 伊坂幸太郎(いさかこうたろう) |
生年月日・年齢 | 1971年5月25日・51歳 |
ジャンル | 推理小説 |
代表作 | 『重力ピエロ』(2003年) 『アヒルと鴨のコインロッカー』(2003年) 『ゴールデンスランバー』(2007年) 『逆ソクラテス』(2020年) |
『重力ピエロ』は映画化もされ超有名作品ですので,聞いたことのない人の方が多いかもしれません。
読書好き,特に推理・ミステリー小説好きな方なら誰も知る人だと思います。
作品(砂漠/伊坂幸太郎)のあらすじ
裏表紙のあらすじは以下のとおりです。
仙台市の大学に進学した春,なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。少し軽薄な鳥井,不思議な力が使える南,とびきり美人な東堂,極端に熱くまっすぐな西嶋。麻雀に勤しみ合コンに励み,犯罪者だって追いかける。一瞬ですぎる日常は,光と痛みと,小さな奇跡でできていた。明日の自分が愛おしくなる,一生モノの物語。
小説『砂漠』
日本屈指のミステリー小説家『伊坂幸太郎』らしからぬ,ガチガチの青春群像劇ですね。
大学生の何気ない日常…とは程遠い事件(空き巣犯に車で轢かれたり,連続通り魔に羽交い絞めにされたり,超能力者が出てきたり…)も実際には起きるのですが,自然と懐かしさのようなものを感じてしまう不思議な作品です。
ここだけは見逃せない『砂漠』(伊坂幸太郎)の見所(ネタバレ注意)
※ここからは一部ネタバレを含みます。ご注意ください。
現実にいそうでいない?個性豊かな登場人物
- 北村 (一応)主人公の男。物事を俯瞰して見る,常にクールな性格の大学生。
- 西嶋 自分にも相手にも,正直な嘘の付けない男。説得力はないが名言メイカー。
- 東堂 大学1?の美人な女の子。無表情だが,根はいいヤツ。
- 南 スプーン曲げから物体移動まで起こせる超能力者。それ以外は一番普通の女の子。
- 鳥井 影の主人公(って勝手に思ってる)。軽薄な性格でお金持ちな男の子。
主な登場人物は同じ大学に通うこの5人です。
鳥井が「確立と中国語の勉強」と題して,『東西南北』の名にちなんだ4人に麻雀をしようと声をかけたのが出会いのきっかけでした。
それぞれ絶対に交わりそうにない性質をもっている5人が麻雀仲間として知り合うというの面白いですよね。
お互いに依存はせず,一定の距離感はとりながらも,ちゃんと仲のいい5人の関係性が素敵で,そのやり取りを見るだけで,懐かしくほっこりした気持ちにさせられます。
他にも「幹事役の莞爾」が口癖の生粋の陽キャ『莞爾(かんじ)』くん,のちに北村の彼女となるブティックで働くお姉さん『鳩麦(はとむぎ)』さん,なんかも要所で作品を惹きたててくれる名脇役です。
心にひびく名言の数々
『砂漠』(伊坂幸太郎)の一番の見所はなにか…
それは間違いなく『セリフ』だと思います。
誰の心にも響くであろう名言,その一部をご紹介いたします。
「一心不乱に,オレのイノチを打ち込んだ仕事をすればそれでいいのだ」
小説『砂漠』
不可能と思われることにも果敢に挑んでいく西嶋を見る,北村の心に浮かんだこの言葉。(厳密には坂口安吾の小説の中の言葉らしいけど割愛…)
単純にかっこいいですし,「どうしていいか分からない…」「自信がない…」という悩みを持つ人を勇気づけてくれる言葉です。
「…でもね,もっと驚かないといけないのはね,一人の人間が,本気で伝えたことも伝わらないっていう事実ですよ…(略)…でもね,三島由紀夫でも無理だったのに,腹を切る覚悟でも声が届かないのに,あんなところで拡声器で叫んでも,難しんですよ。」
小説『砂漠』
名言メイカーこと,西嶋の言葉です。
一見,「どんなに叫ぼうが,人の心に届くことがない」という悲観的な言葉に見えますが,実はそうではありません。
西嶋が言いたいのは「人の心には簡単に届かない…」,だからこそ根気強くしつこくしつこく本気度合いを伝えることがあるということです。
「賢い奴はね,先のことを考えすぎるんですよ。馬鹿になればいいんですよ。たとえば…目の前で子どもが泣いているとしますよね。銃で誰かに打たれそうだとしますよね。その時に,正義とは何だろう,とか考えてどうするんですか?助けちゃえばいいんですよ。」
小説『砂漠』
こちらも名言メイカーこと,西嶋の言葉です。
「思い立ったが吉日」な西嶋を体現したかのような,ハッとさせられる名言ですね。
西嶋はこのようなたとえ話を作中で何度もします。
このような着眼点の面白さが,名言メイカーたるゆえんなのかもしれません。
「『自由演技って言われたけど,どうすればいんだろう』って頭を掻きむしって,悩みながら生きていくしかないんだと,わたしは思う。」
小説『砂漠』
面倒見がよく,聞き上手な北村の彼女こと,鳩麦さんの言葉です。
私達は幼稚園,小中高,大学の進学…と子供のころから,人生の指針はある程度きまっているものです。
それが社会人になる(なった)瞬間,「自由にどうぞ」と投げ出されてしまう。
そんな『自由』な大人の生き方を説いた名言です。
心にひびく名言の数々,いかがでしたか?
自分にも相手にも,極端に正直な,嘘の付けない名言メイカーこと『西嶋』のセリフが目立ちがちですがそうではありません。
『砂漠』ではすべての登場人物のセリフが見逃せない名言です。
セリフはその前後の場面展開あってのものなので,ぜひ一読することをオススメします。
まとめ~名言に励まされたい現役大学生は『砂漠』を読め!~
『伊坂幸太郎』の小説『砂漠』の書評,いかがでしたか?
大学生の青春群像劇…という内容の作品ですので,やはり現役大学生の方にこの本をオススメしたいですね。
もちろんこれから大学に進学する中高生,大学時代を懐かしみたい社会人の方にもおススメです。
★個性豊かな登場人物たちに出会ってみたい
★名言メイカー西嶋に勇気をもらいたい
そんな思いを持つ方は,ぜひ一度この作品を読んでみてください。
余談~サハラ砂漠に積雪が観測された話~
小説のタイトル『砂漠』,このタイトルは西嶋のこんな言葉からきています。
「その気になればね,砂漠に雪を降らすことだって,余裕でできるんですよ。」
小説『砂漠』
不可能を不可能とも思わない,常識知らずな無鉄砲な西嶋らしさ全開のこのセリフですが,初版から11年後の2016年に現実になったそうです。
それも新装版が発売されるタイミングに雪が降った…ようで,作品との縁を感じずにはいられないですよね
西嶋がいつも言っているように,現実から目を背けず,行動を起こし続ければ,不可能なんてないのかもしれませんね。
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